タイには、300万から400万人の外国人労働者および国籍不明の労働者が働いていると言われる。建設業や漁業などタイ人の嫌がる肉体労働の産業はほとんどが、ミャンマー人をはじめとする外国人によって支えられている。
タイの労働力人口は3960万人ほど(11年推計)だから、その1割ほどが外国人によって支えられている。タイの経済は、今後10年でさらに700万人ほどの労働力を必要とするとみられるが、近隣諸国からの外国人労働者はなお、150-250万人必要とされている。数字がはっきりしないのは、不法入国の労働者が多いからだが、もともとミャンマーやラオスとは国境があいまいだったわけだから、国境近辺に住む山岳民族などはタイ人のIDカードを持っていない人も多い。
タイ政府は、近年、これら外国人労働者のID(国籍証明)登録を進めようと動いてきている。外国人労働者に対し、一時的なIDを交付する。労働省は最近、12年12月14日をタイの企業が外国人労働者を登録する期限として、それをしなければ雇用できないとした。タイの関連する企業は、「これでは工場閉鎖に追い込まれる」、「輸出が打撃を受ける」と延期を申し出た。それでなくても、タイは労働者不足に直面している。また、ミャンマー政府も、「ミャンマーからと言っても、少数民族が多く、国籍を確定できないから、待って欲しい」と申し出た。
実際、外国人労働者登録と言っても、ただ地方の役所に行って書類にサインをすればすむ話ではなく、そもそもの出身が証明できないケースも多い。また手続きにも時間と費用がかかるようだ。外国人労働者のうち、これまでに登録できたのは、138万人ほどだと言われる。残る160-260万人は登録されていないようだ。少なくとも、150万人ほどの外国人労働者が国外退去の瀬戸際にあると言われる。
延期申し立てに対して、タイ政府は、「今まで6回も(最近では12年6月14日)締め切りを延期してきたので、もはや延期できない」として、12月14日のデッドラインをキープした。ミャンマー政府からは、その後、インラック首相が12月17日にダウェイ開発の件でミャンマーに来たとき、「延期すると約束した」となお延期を求めているが。
労働省雇用庁によれば、今回31万人ほどの外国人労働者が国外退去の対象になると言われる。カンボジア人15万人、ラオス人10万人、ミャンマー人6万人。なぜか、ミャンマー人の数は少ない。もっとも、そこはタイランドのこと。それほど厳格で徹底した措置が講じられるとは見えない。「外国人労働者が強制国外退去させられるのがいやなら、雇用主は、労働者の名前を記して、雇用継続できるリクエストを出すように」と、雇用庁ではアドバイスしている。
また、一度国外に出されても、労働省は、その国の大使館と協議し、パスポートを発行してもらい、再雇用できるよう努めると言っている。労働力が今や不足しがちなタイランド。と言って、農村に居る1600万人(全労働力の4割)を工場やサービス業に狩り出すのもこの国の文化にそぐわない。
一方で、ミャンマーやカンボジア、ラオスといった後進経済圏が発展してくれば、出稼ぎ労働者の数は、そのうちお願いしても減ってくるだろう。折からの最低賃金の大幅引き上げと合わせ、タイ企業の国外立地がここ2-3年、加速しそうだ。
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