洋太、タイに散る…。WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチは、王者佐藤洋太(29)が同級8位の挑戦者のシーサケット・ソールンビサイ(26)=タイ=に8回1分26秒、レフェリーストップでプロ初のKO負けを喫し、3度目の防衛に失敗。これで、日本人男子のタイでの世界戦は18戦0勝17敗1分け。伝説のファイティング原田らが涙をのんだタイの洗礼を、佐藤も浴びた。
試合後の控室。王座陥落した佐藤がグッタリとうなだれて、イスに座り込んだ。
「なんの言い訳もない。シーサケットは強かった。最初から体が動かなかった。プレッシャーがあったのかな」
試合前は余裕があった。控室にはプレスルームのない日本の報道陣も待機したが、佐藤は部屋の角で読書にふけりリラックスムード。一部屋置いた隣の部屋がシーサケットの控室。ガラス窓で仕切られているだけで丸見え。両構えのシーサケットが左構えで試合の30分以上も前から汗だくになってミット打ちをする姿を見て、「今日はサウスポーで来るな」と冷静に試合展開を読んだ。
リングインしてからが長かった。日本では国歌斉唱、選手紹介されると、早々にゴングが鳴らされるが、タイ語によるセレモニーが延々約30分間も続いた。前日はリング設営時にフル稼働していたエアコン代わりのミスト扇風機も稼働しておらず、会場内はムシムシ状態で、じっとしているだけで汗ばむほど。しかし、それも想定内。リング上で笑みすら浮かべる佐藤がいた。
しかし、いざ、ゴングが鳴ると、佐藤が別人になった。接近戦でガンガン攻めてくるシーサケットをさばけない。会場ではけたたましくかねや太鼓の鳴り物が鳴り響き、場内アナウンサーが「シーサケット」を連呼。シーサケットのパンチが当たるごとに、会場を埋め尽くした約3000人の耳をつんざく大歓声。それに後押しされてノリノリのシーサケット。佐藤は4回にダウン気味のスリップダウン。ロープを背負うシーンも多くなり防戦一方。敵地タイの魔物にのみ込まれたように、得意の人を食った幻惑殺法は影を潜めた。7回までの3人のジャッジは、いずれも4~7ポイントで挑戦者という大差がついていた。
これで、2005年12月以来続けてきた連勝も21で止まった。かつて、佐藤は「連勝が途切れたら引退する」と記者に漏らしたことがあるが、試合後は「今後のことは分からない。でも、悔しい」と唇をかんだ。タイの屈辱から、佐藤は再び、立ち上がれるのか-。
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