10年もの国債利回りの各国比較。えっ?日本がトップ? 「数字で見るタイ事情」その2かつては戦費確保のためなどに発行されていたこともある「国債」。現在では国家への投資という側面が強く、比較的安定した金融商品として取り引きが行われている。このため、国家への信用を背景に原則として利回りは低いはずなのだが、時の社会動静や経済状態が色濃く反映されることから、発行する国の銘柄ごとに数値には大きな差がある。
10年もの国債の最近の利回りを比較したのが次の一覧図(12月17日現在)。世界の主要21カ国を抽出した。驚くなかれ、我が日本がダントツのトップに。
通常、利回りが低いということは、債務不履行(デフォルト)に陥る可能性が低い、骨太の経済体質であることを意味する。「えっ?日本って、まだそんなに信用があるの?」と思われる方も多いかもしれない。少子化に高齢化、市場は縮小の一途で、プラスの材料に乏しいとされる日本経済。「一体、なぜ?」
国の「信用度」を測る重要なモノサシとして、民間の格付け会社による「格付け」がある。アメリカに本社のあるムーディーズとスタンダード&プアーズ、それに、フランスに持ち株会社があるフィッチの3社が特に有名。このうちのスタンダード&プアーズの最新の格付けを上記一覧図に加えてみた。
見事に、利回りランキング上位に格付けの高い国々が集まった。一般的に、投資奨励対象とされるのはBBB-以上。それを下回ると、投機商品とみなされ、リスクは一気に高まる。2011年の欧州経済危機では、ギリシアなどが軒並み最下位ランキングに位置づけられた。
ところが、利回りが低いからといっても、直ちにデフォルトの危険が少ないことにつながらないというのが、最近の国際経済。さまざまな事情が絡み合い、教科書的な理解がそのままでは通じないほど複雑怪奇な現象が続いている。
例えば、経済が好調のタイ。格付けは意外と低いBBB+だが、一つ上のAランクを伺う勢いで方向性は「安定的」。何よりも豪州や韓国と同様に、3%台の運用利回りは投資に関心のない人でも魅力的に映る。
一方の、AA-ながら「ネガティブ」とされ、降格の懸念が常に付きまとう日本。国債の利回りは抽出国中最低のわずか0.7%。だが、数字の割に「安定性」を体感できないところに少なからぬ不安が残る。そもそも、10年もので利回りが1%にも満たないところに、世界のマネーは集まろうはずがない。
結局のところ、日本経済がどう進んでいくのか、状況を見定めていくしかないのが実情のようだが、安心材料が乏しいことが不安に不安を重ねている。
さまざまな統計データを元に、タイと日本、タイと世界を比較するコーナーを新たに設けました。題して「数字で見るタイ事情」。ビジネスや経済ネタだけに限らず、タイ社会のちょっとした話題を提供します。
発信元: http://response.jp/article/2012/12/21/187556.html