アジアで最も再生可能エネルギー導入に熱心な国はどこだろうか。導入規模であれば中国やインドだ。太陽光に対する優遇策では日本だろう。
人口7000万の国、タイは再生可能エネルギーを語る文脈で取り上げられることは少ないが、実際には計画的に規模を増やそうとしている。固定価格買取制度(FIT)を早くも2006年に導入しており、現在は、バイオ液体燃料が発達している*1)。
バイオ液体燃料の生産量は2011年時点で世界第10位(11億L)。アジアでは中国、インドネシアに続いて第3位だ。内容はバイオエタノールとバイオディーゼルがほぼ同量。タイ政府はバイオ液体燃料の使用を政策で義務付けている。輸送用燃料を再生可能エネルギーでまかなおうという試みだ。
*1) この他、集光型太陽熱発電(CSP)が世界ランキングに登場する。2011年にCSPの導入を始めたばかりだが、既にアジアでは首位、世界でも8位の規模に達した。出力は9.8MWだ。
タイが再生可能エネルギーに注力している理由はこうだ。発電や輸送、熱源などの全用途を合計した一次エネルギーに占める化石燃料の比率が高過ぎる。2012年時点で90%を占めている。これほど多くの化石燃料を輸入に頼るのはかなり危険な状態だといえるだろう*2)。再生可能エネルギーは一次エネルギーのわずか10%を占めるにすぎない。そのほとんどが水力*3)とバイオ燃料だ。
*2) タイは原子力発電を導入していない。2011年以前には2020年に導入する予定だったが、現在では2030年に計画を変更した。
*3) 2009年時点で発電に占める比率は火力95.2%、水力4.8%であり、こちらも危険な状態だ。
政策主導で再生エネを導入
タイ政府はこの状態を改善する政策「Renewable and Alternative Energy Development Plan:AEDP2012-2021」を2012年に打ち出した。1次エネルギーに占める再生可能エネルギーを2021年に25%まで高めるというものだ。エネルギーの種類ごとに数値も公表している(図1)。
図1では青い縦棒で2011年の実績値を、橙色の縦棒で2021年の計画値を示している。最大の柱は既に立ち上がっているバイオマスの倍増策だ。タイではバイオ燃料(液体、ガス)以外に固体バイオマスを使った発電も進めている。2011年時点の規模は1.6GWだ。
次いで、太陽光、水力、風力を伸ばしていく予定だが、いずれも現状は計画値に対して大幅に少ない。どうやって達成するのだろうか。
発信元: http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1305/30/news025.html